パブリック債券

足元、ハイイールドへの投資は魅力的か?

2021年4月 – 7 分 レポートを読む
ハイイールドは、デフォルト状況の改善から金利上昇に対する感応度の低さに至るまで、いくつかの支援材料によって引き続き牽引され、景気回復の本格化に伴い良好なパフォーマンスをもたらす可能性があります。

新型コロナウイルス感染拡大以降のハイイールド市場に注目が集まっています。世界の一部の地域においては新型コロナウイルスの新規感染者数が増加していることから、経済活動の正常化には時間を要すると見られますが、今後数ヶ月から1年にかけて本格的な回復が予想されています。

金利上昇が引き続き注目されていることから、2021年初に米国および欧州のバンクローンが約2%のリターンとなり、ハイイールド債券をアウトパフォームしたことは驚くには値しません1。所謂、リフレーションの環境下においては、バンクローンなどの変動金利商品への投資は確かに有効である一方、ハイイールド債券への投資も比較的有益であると思われます。特に欧州においては、米国債利回りの上昇による影響が限定的であったため、第1四半期のパフォーマンスは1.6%となりました。米国ハイイールド債券は、バンクロ ーンを含めた広範なハイイールド市場に対して劣後したものの、他の固定金利商品と比較して底堅く推移し、第1四半期のパフォーマンスは0.95%となりました2。これは、ハイイールド債券のデュレーションがより短期であることが一因となっています。例えば、投資適格社債の平均デュレーションは7年をやや上回るのに対して、ハイイールド債券の平均デュレーションは4年程度となっています3
 

回復の前兆

ファンダメンタルズの観点においては、デフォルトは引き続き改善傾向にあると思われます。ディストレスト状況にある発行体の割合が数年ぶりの水準へと低下し、ハイイールド債券およびバンクローンの両市場における流動性が豊富であることから、今年におけるデフ ォルト率は過去平均である2~3%の圏内に留まると予想しています。比較として、昨年のハイイールド債券とバンクローンのデフォルト率は3~5%であったものの、これは当初予想されていた2桁台のデフォルト率よりもはるかに低い水準にあり、主にグローバルにおける大規模な景気刺激策によりデフォルト率の上昇に歯止めがかかったものと思われます4。また、消費者の需要が回復することから、発行体の利益、売上およびキャッシュフローは、本年から2022年にかけて大きく改善すると予想されます。 

良好なパフォーマンスおよびデフォルト予想の改善により、ハイイールド全般のスプレッドは足元数ヶ月において大幅に縮小し、バリュエーションに関する懸念が生じています。足元におけるハイイールド債券およびバンクローンのスプレッドは、過去平均対比で縮小した水準にあるものの、バリュエーションに関する懸念についてはいくつかの理由により異なった視点から眺めることが必要です。一つ目の視点として、足元スプレッドは縮小しているにもかかわらず、過去最低水準近辺で取引されているケースも散見される投資適格社債と比較して、ハイイールドのスプレッドは依然魅力的な水準にあります。例えば、ハイイールド債券は2017年および2018年におけるサイクルの最低水準、バンクローンは世界金融危機前後の最低水準に対して引き続き拡大したスプレッド水準に留まっています。
 

1.    出所: Credit Suisse 2021年3月末現在
2.    出所: Bank of America Merrill Lynch 2021年3月末現在
3.    出所: Bank of America Merrill Lynch
4.    出所: S&P、Credit Suisse 2020年12月末現在

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Martin Horne(マーティン・ホーン)

パブリック資産 グローバル責任者、ベアリングス欧州責任者

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