新興国債券:1月に「春」を迎える可能性
世界中に蔓延するインフレ問題や地政学的懸念が払拭され、金融政策の転換が見込まれる中、2023年は新興国債券投資にとって期待できる年になりそうです。
直近数年間の投資リターンは難しい局面が続きましたが、2023年は新興国債券にとって回復が期待できそうです。2022年12月初の時点で、現地通貨建て債券およびハードカレンシー建てソブリン債券指数は、それぞれ2020年12月および2021年9月につけた最高値から5分の1下落し1、また、新興国社債は2021年6月の最高値から31%下落しました2。新型コロナウイルス感染拡大が落ち着き、世界で経済活動が徐々に再開されるにつれ、その影響に対処するための金融・財政緩和により世界的なインフレの急拡大が助長されました。2022年2月のロシア・ウクライナ紛争およびそれに対する制裁により、インフレがさらに加速しました。世界の中央銀行は積極的な対応を見せたものの、経済的混乱の状況把握を優先させたことで対応の遅れへとつながりました。
2023年を見据えると、特に世界の中央銀行が意図した状況になり始めていると思われます。インフレ率は2022年第1四半期以降に実施された金融引き締めにようやく反応し始め、グローバルの経済活動は冷え込み、ロシア・ウクライナ紛争は収束したかのように見え、中国は「ゼロコロナ」政策について再検討しています。つまり、金融政策が転換する可能性が高まっています。緩和的なマクロ経済政策はまだ先かもしれませんが、主要な中央銀行は利上げペースの減速について言及し始めており、新興国の中央銀行は利上げをほぼ完了させました。金融市場は、引き締めサイクルの終焉を正しく予測し始めたと思われます。ベアリングスのソブリン債券チームの分析に基づくと、中央銀行にとって次のサプライズは、2023年後半にインフレ率が現在の予想よりも大幅に低下することであり、緩和的な政策がそれに続くものと思料されます。
1. 出所: J.P. Morgan GBI-EMGD、J.P. Morgan EMBIGD
2. 出所: J.P. Morgan CEMBI
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