2024年 パブリック債券市場見通し
不確実性の高まりとリスクの拡がりにより先行きが不透明となる中、ハイイールド、投資適格社債、新興国債券および証券化商品の各資産クラスに関する今後の見通しについて、各債券市場の投資プロフェッショナルが議論します。
マット・リバス(モデレーター):今日、世界全体に数多くの不確実性が存在しています。景気後退に向かっているのか、その期間や深刻度合はどの程度なのか?今後の金利動向は?このような状況の中、過去1年間の投資市場でのサプライズや、今後1年間におけるこれらのダイナミクスについて、説明してください。
リカルド・アドロゲ:2023年の米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクルの幅は確かにサプライズだったものの、米国10年国債利回りの上昇や米ドル高、世界の大半の国における経済成長の鈍化などの背景にも関わらず、利上げを通じて米国経済が加速を続けたことはそれ以上に大きなサプライズでした。さらに重要なことは、インフレ調整後の金利が過去18ヶ月間で300bps上昇したことです¹。そして、それは世界経済、特に米国経済が、より長期に亘って堅調に成長を遂げていることを示唆していると思料されます。
ブライアン・パチェコ:ハイイールド市場に関しては、2023年、ローンと債券の両方が堅調に推移したことが一番のサプライズでした。これは、ハイイールドの特性である短期のデュレーションと低い金利感応度が一因ですが、ネガティブなカタリストがごく少数であった結果でもあります。予想通り、2023年初に一部で予想されていたデフォルトの波は起こらず、金利の「長期的な金利上昇(HIGHER-FOR-LONGER)」という現実は、特に変動金利のローンにとって追い風となりました。同時に、格下げも妥当な水準となっています。
もちろん大きな問題は、マクロ経済が悪化し始めた場合、この好調を維持できるかどうかということです。その答えの一部には、現在の利回りおよびリターンの水準があります。ハイイールド市場に関しては、ローンは年初来で約10%のリターンとなり、現在の利回りは約9.5%となっています²。米国ハイイールド債券は、年初来で5%近く上昇し、利回りは約9.5%となっています³。この利回り水準は、経済が大幅に減速した場合において厚いクッションとなると思料されます。
1. 出所: Federal Reserve 2023年10月31日現在
2. 出所: Credit Suisse 2023年10月31日現在
3. 出所: Bank of America 2023年10月31日現在