プライベート・クレジット投資における革新的な取り組みがESGの進展を促進
プライベート・クレジット投資におけるESGへの取り組みがますます洗練さを増す中、貸し手はより優れた、多くの持続可能な取り組みを促すための様々な革新的な手法を採用しています。しかしながら、市場はまだ進化の途中であり、投資家、スポンサーおよび貸し手は今後も重要な役割を果たしていくと思われます。
プライベート・クレジット投資においては、ESGに関する独自のアプローチが必要
プライベート・クレジット投資においては、様々な理由により、上場株式および債券投資に関するESG分析とは明確に異なる手法が必要となります。すべての借り手を個々の状況に応じて評価する必要があるものの、共通する一定の考慮すべき要素を予め念頭に置く必要があります。第一に、プライベート・クレジット投資は流動性の低い資産クラスであり、通常の融資期間は5~7年です。バンクローン市場とは対照的に、ローンまたは投資対象資産を流通市場で売買することは殆ど不可能であり、資産売却によって融資期間中に投資案件から資金を引き揚げることは困難を極めます。さらに、株式投資家とは異なり、債権保有者は企業の株式を保有せず、企業の取締役会にも参加しません。その結果、債権保有者は投資先の行動および意思決定に対して、直接影響力を行使できない状況にいます。こうした要因から、プライベート・クレジット投資においては、予め借り手のESGに関する取り組みを適切に精査することの重要性がますます高まっています。
プライベート・クレジット市場において、投資家が融資を実行する所謂ミドルマーケット企業の属性についても考慮する必要があります。ベアリングスにおいては、ミドルマーケット企業の定義をEBITDA(利払い前、税引き前、減価償却前の利益)2,000万米ドルから7,500万米ドルの範囲にある企業と定めています。このようなミドルマーケット企業は、上場している大企業と比較して、成長の初期段階にある場合が一般的であり、その多くはESGに関する課題に取り組むことを表明していますが、通常、大企業ほどのリソースを有していません。例えば、社員数が50人から500人程度のミドルマーケット企業の多くは、ESGおよびサステナビリティに関する取り組みに完全に特化したチームを有しておらず、大企業の多くが現在四半期毎に公表している、ESGおよびサステナビリティに関する充実した報告書を作成していない場合が一般的です。さらに、大企業の多くが既に導入しているESG原則に基づく詳細かつ具体的な実施手順の作成についても、未だ初期段階にある可能性があります。