2024年6月 ベアリングス・グローバル・マクロシナリオ
ベアリングス・ジャパンでは、世界経済の中長期的な景気循環や構造変化を捉え、今後1年から1年半程度の時間軸で想定されるいくつかの経済シナリオを洗い出し、運用戦略の点検を複眼的な視野から行っております。今回、マクロシナリオの見直しを行いましたので、以下の通りご案内いたします。
1. 2024年6月時点のベアリングス・グローバル・マクロシナリオと、今回のシナリオ策定の着眼点
今回は従来の4つのシナリオである「急降下」「ソフトランディング」「インフレ時代突入」「分断化進行」を維持しました。
6月に入り、カナダ中銀や欧州中銀が利下げに踏み切りました。これまでの金融政策の効果が生じていることを受け、経済の軟着陸(=ソフトランディング)を目指す動きの一環と見ています。一方、これまでの金融政策の効果が想定以上に実体経済をむしばみ、金融不安などの不均衡を惹起すれば、ソフトランディングに向けた軌道を外れ、経済の急減速を招く「急降下」シナリオが実現する可能性に留意が必要です。もっとも、緩やかな雇用市場の減速や需要鈍化によるインフレ懸念の鎮静化に伴って予防的な利下げが実施され、引き締め過ぎのリスクを軽減できれば、景気の「ソフトランディング」の達成が可能になると見ています。一方で米大統領選挙を筆頭に世界的に重要な選挙を控える中、大きな政府が志向され、政府支出の拡大がインフレの抑制を妨げるリスクは依然として残ると考えます。欧州議会選挙で極右が躍進した欧州の国の一部が注目を浴びていますが、人口減少や不法移民対策に伴う構造的な労働需給のひっ迫によりサービス価格の粘着性が残ることで、物価が高止まりする「インフレ時代突入」の可能性も念頭に置く必要があると考えます。また、保護主義政策の動きが進展するなど、米中の対立構造は一段と深刻化の様相を呈しています。こうした二大経済大国の姿勢は、世界経済の分断化、二極化の流れを助長し、「分断化進行」の実現性を引き続き高めると見ています。
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