パブリック債券

投資適格社債:投資機会到来

2023年10月 – 3 分 レポートを読む

現在の魅力的な利回りと堅調なトータルリターンの可能性により、投資適格社債投資の魅力は説得力を有しているものの、不確実性は依然として残っています。

投資適格企業による堅固なバランスシート管理により、2023年にはこれまでほとんど格下げが見られませんでした。投資適格企業は、業績が悪化したとしても、バランスシートが良好な状態を維持しているため、財務基盤は堅固な状態を維持すると見られています。さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを停止し、景気減速でインフレが抑制された場合には利下げに転じる可能性もあるため、同資産クラスは魅力的なトータルリターンの投資機会を提供しています。

投資適格社債の魅力的なリスク・リターン・プロファイルにより、スプレッドは着実に縮小してきました。また、当資産クラスへの関心が高まっていることから、スプレッドはさらに縮小する余地があるかもしれません。第3四半期末時点の投資適格社債のスプレッドは121bpsまで縮小し、10年平均の124bpsをわずかに下回り、20年平均の約148bpsを大幅に下回りました(図1)。投資適格社債の利回りは2023年初から徐々に上昇し、現在は6%強に達しており、過去10年においてほとんど見られたことのない水準となっています1。世界的な成長およびインフレをめぐる不確実性や米国の利上げサイクル終了の可能性が特徴的な環境において、魅力的なバリュエーションと市場の質の高さが相俟って、投資適格社債はかなり良好なポジションにあると思料されます。

図1: 投資適格社債のスプレッドは引き続き縮小

a-sweet-spot-for-ig-chart1-jp.jpg出所: Bloomberg Barclays 2023年9月末現在

堅調なテクニカルと弱いファンダメンタルズ

投資適格社債は引き続き、投資家の旺盛な需要に下支えされた非常に強いテクニカル面からの恩恵を受けています。2023年、同市場は保険会社や利回りを選好する投資家から特に注目を集めているほか、より保守的かつ高リスク資産からのシフトを試みる投資家からの需要も見られます。特に、投資適格社債には年初来で約1,600億米ドルが流入しており、実質的に昨年の持続的な流出から一転しています2。一方、ネットベースでの新規発行額は比較的同程度の水準にとどまっており、年初来で9,950億米ドルが市場に供給されました3

格付けの観点から見ると、格下げに比べ格上げが多いことも堅調なテクニカル面を下支えする要因となっています。2023年前半では、ハイイールドから投資適格に格上げされた発行体は6.6%であるのに対し、投資適格からハイイールドに格下げされた発行体は1.5%となりました4。過去の記録と比較すると、現在の市場はフォーリンエンジェル・リスクが極めて低位となっています。特に、市場の低格付け部分の多くは、最近投資適格に格上げされたオクシデンタル・ペトロリアムのような、堅固なバランスシートと強固なファンダメンタルズを有するエネルギー・セクターの発行体で構成されています。

企業のファンダメンタルズの観点からは、状況は多少悪化しており、ファンダメンタルズが非常に堅調な水準から若干の弱含みとなっていることは注目に値します。投資適格企業の収益成長率は前年比+3.4%だったものの、前四半期比ではー1.6%となりました。EBITDA成長率は前年比-1.9%だった一方、前四半期比ではー4.5%となっています5。数字上では軟調な推移を明確に示し始めているものの、年内はファンダメンタルズ面およびテクニカル面が均衡していると思料されます。また、企業業績のさらなる低迷により、投資家が市場のよりリスクのある資産から同資産クラスへの配分を増やすと思われるため、投資適格市場にとってプラスになる可能性があります。

魅力的な投資機会が継続

市場全体を見ると、引き続き魅力的な投資機会が生じています。セクターの観点からは、エネルギー・セクターの発行体に対して引き続きポジティブに見ています。ほとんどのエネルギー・セクターの発行体は、ここ数年でクレジット指標が大幅に改善されており、原油価格が現在の高水準から下落したとしても、魅力的なキャッシュフローを生み出し続ける可能性が高いと考えます。また、金融セクター、特に長期の保有が中心である保険会社には魅力的な投資機会を見出しているほか、オフィス以外の分野に特化した選別的な不動産投資信託にも価値があると考えます。

より具体的には、銀行セクターでは、資本構造上のあらゆる部分において米国および米国外籍の大手銀行に価値があると見ています。また、ベアリングスの広範なクレジット・リサーチにより、特異な投資機会を発掘し続けています。その1つが、規制変更などの理由により初日にコールされる可能性の高い、コーラブル銀行債の特定です。関連する分野におけるリサーチには、コール初日に予想以上にクーポンがリセットされる債券の特定もあります。こうした機会の多くは、LIBORから SOFR への移行に関連するものであり、各債券の契約条項の変更を理解する必要があるなど、同様の状況も増加しています。ベアリングスでは、これらの投資機会は短期債における魅力的な利回りを提供すると見ています。

情報技術セクターにおいては、バリュエーションに魅力がない点やM&Aリスクを考慮し、またヘルスケアや医薬品セクターにおいては規制リスクを考慮し、引き続きやや慎重に見ています。

今後の見通し

需要の減退や潜在的な成長鈍化の影響を受けないわけではないものの、投資適格企業は概ね健全性を維持しており、各セクターにおいて強い競争力を有する傾向があります。同時に、FRBの利上げサイクルが終了する可能性や、不透明な環境下における高格付け銘柄の魅力など、投資適格社債を下支えする追い風も数多く存在します。しかし、徹底したリサーチとボトムアップの銘柄選択は、今後想定されるあらゆる問題に対処するために、引き続き不可欠です。

1. 出所: Bloomberg U.S. Corporate Index 2023年9月末現在
2. 出所: J.P. Morgan, Bloomberg 2023年9月末現在
3. 出所: Barclays 2023年9月末現在
4. 出所: J.P. Morgan 2023年6月末現在
5. 出所: J.P. Morgan 2023年6月末現在

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Charles Sanford(チャールズ・サンフォード)

投資適格社債責任者

Stephen Ehrenberg(ステフェン・イーレンバーグ)、CFA

マネジング・ディレクター

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