米連邦公開市場委員会(FOMC)に見るハト派とタカ派の分断
9月のFOMCではテーパリング(量的緩和策縮小)が「早ければ次回11月の会合で開始を決定する」ことが示され、市場の注目はテーパリング後の利上げの時期に移っている。コアインフレ率(食品とエネルギーを除く)の見通しについては、2021年が同+3.7%、2022年は同+2.3%と共に上方修正され、市場で注目されるドットチャート(FOMCメンバーによる「政策金利見通し」、図1)では、メンバー18人の予想中央値で見て2022年末までに政策金利が1回引き上げられ、2023年に更に3回の利上げが示唆され、前回6月の見通しに比べて利上げペースが1回分加速する格好になった。
ただし、ドットチャートを詳細に見ると、FOMC内でのハト派とタカ派の分断が浮き彫りになる。ハト派は足元の物価上昇は一時的と見て、米国の最大雇用の達成までは利上げに慎重だが、タカ派はインフレが制御不能になる前に予防的な利上げを実行すべきと見ているようだ。ハト派とタカ派を分断するのはインフレを一時的と見るか否かに集約される。従って、FOMC全体の中央値だけで判断すると米国の金融政策の行方を見誤る可能性がある。
そこでドットチャートに示される見通しをハト派とタカ派のそれぞれの中央値に分けて見たのが図2である。ハト派は2023年までに1回程度の利上げで充分と見て、2023年末の政策金利を0.375%と予測し、最終的には2.25%まで引き上げられると考えているのに対し、タカ派は2023年末までに4回程度の利上げを見込み、政策金利は2023年末で1.125%、2024年末で2.125%、最終的には2.5%まで上がると見ている。
図3は、これらの政策金利の予想経路を、弊社の金利予測モデルに基づいて算出した利回り曲線を示したものである。米国10年国債利回りは、ハト派予想が市場コンセンサスになれば1.1%程度まで低下すると推計されるが、タカ派予想が実現すれば1.8%程度にまで上昇することが予想される。
インフレが一時的か否かを巡り今後もハト派、タカ派論争は白熱しそうだ。それに応じて米国債市場の変動も高まろう。ただ、パウエル議長を筆頭とするFOMC主流派はハト派で占められていることが知られている。米国債の強気派には心強い限りだ。供給制約が長引くことは景況感の停滞につながり、雇用回復には向かい風になる。コロナ禍からの回復過程にあっても米国の労働参加率は伸びていない。インフレ懸念には注意が必要だが、利上げのペースを加速できるほど米国景気の力強さは無いものと思われる。年末にかけて、FOMCのハト派見通しが優勢となり、米国10年国債利回りは再び1%台前半にむけて低下していくものと見ている。
図1:ドットチャートと政策金利見通し
出所:米国連邦準備制度理事会(FRB)公表資料をもとにベアリングス・ジャパン株式会社が作成
図2:ハト派、タカ派それぞれの中央値予測
出所:米国連邦準備制度理事会(FRB)
図3:ベアリングスの金利予測モデルに基づいて算出した利回り曲線
出所:ベアリングス・ジャパン株式会社
K20214Q04