米国国債の買い時を探る
2022年4月時点の債券市場の動向および見通しについて、先進国ソブリン債券チームの溜 学(たまる まなぶ)が解説します。
米連邦準備制度理事会(FRB)は5月3~4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%~0.50%から0.75%~1.00%に引き上げるとの見通しが強まっている。また、それ以降の利上げ継続を市場は織り込んでいる。雇用と物価の安定の二つの使命を持つFRBは物価の安定を優先し、インフレ退治に断固たる姿勢を貫くとの見方が有力だ。これを受け、米国国債の利回り上昇(価格下落)が続いている。
では、米国国債の買い時はいつになるか。金利の引き上げが続けば、景気が減速し、やがてインフレも収まるだろう。多少の景気減速ではFRBも利上げの手を緩めないだろう。しかし、FRBのもう一つの使命である雇用の安定に関わるだけに、景気後退(リセッション)に至るほどの景気の失速は回避したいはずだ。景気後退の兆候が現れ始めれば、FRBの利上げ姿勢も変化し、その時こそ米国国債の買い時になるものと予想される。
そこで、米国の景気後退の兆候を探る10の指標を選び出してみた。各指標が過去の景気後退局面に示された数値に到達していれば10点とし、10の指標のうち5つが景気後退を示せば50点というように計算した米国リセッション指数の推移を示したのが下図だ。図を見ると、米国リセッション指数が50を超えていた時期と米国の景気後退期が一致している。直近のリセッション事例である2020年4月のコロナ禍の最悪期で指数は50を超え、その後は低下し、リセッション警戒サインが消えている。
出所:Bloombergのデータをもとにベアリングス・ジャパンが作成
出所:Bloombergのデータをもとにベアリングス・ジャパンが作成
足元の2022年3月の指数は20に上昇した。10の指標の中では消費者信頼感期待指数、全米中小企業景況感指数の2つが景気後退の兆候を示し始めた。この辺りはインフレの高騰が消費者の消費意欲に影響を与え、物価上昇の価格転嫁や人手不足に苦しむ中小企業の悲鳴が数値に現れたと見て良いだろう。その他の指標では米国国債2年-10年利回り格差(0を下回ると景気後退)や米国ハイイールド債券スプレッド(5%を上回ると景気後退)も景気後退の兆候を示す数値に近づいている。FRBの金融引き締めのペースは夏場に向けて加速しそうな状況ではあるが、米国国債の買い場は着実に近づいているようだ。
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